読み聞かせの現場で、子どもたちは紙芝居が大好きです。
わたしは、幼児向けおはなし会のプログラムには、絵本のほかに、必ずひとつは紙芝居を入れるように心がけています。
子どもたちを惹きつける紙芝居の魅力とはどんなものなのでしょうか。
絵本の読み聞かせはしたことがあるけれど、紙芝居は未経験。興味はあるけれど、自分にできるかな?という方のために、紙芝居の特徴をみながら、絵本とは違った見せ方について解説します。
紙芝居と絵本の違い
紙芝居と絵本は、どちらも絵と言葉で成り立っています。読み聞かせでは、子どもたちに、生の声でおはなしするという点も共通しています。
では、紙芝居と絵本の違いとはどのようなものでしょうか。
まず、体裁の違いが挙げられます。
紙芝居は1枚1枚がバラバラで、大きなカードのようです。そのカードの表面に絵が描かれ、裏面に文字が書かれ、はっきりと区別されています。
一方、絵本は、ページが順番に綴られています。絵に対応するように、文字が寄り添い、あるいは重ねて書かれています。
この体裁の違いから、読むときの動作に大きな違いがでてきます。
紙芝居は「ぬく」と「さしこむ」ことで場面を追います。読むときには裏側から。
絵本はページの正面から読み、ページを「めくる」ことでおはなしが続きます。
これにより、紙芝居と絵本とは、楽しみ方に違いがでてきます。
紙芝居を楽しむためには、絵を見る側と文字を読む側の、最低ふたりが必要になります。
読んでいるときに、絵は見えません。見ると読むを分担して紙芝居という楽しみを成立させる。協同によって共感が生まれます。
絵本はひとりでも読める「個」の楽しみ方です。読み聞かせでは、読み手と聞き手に分かれますが、常に一緒に同じ絵を見て楽しみます。読み手と聞き手は、一体化して絵本の中に没入します。
紙芝居の見せ方
「舞台」の重要性
絵本は「読む」ものですが、紙芝居は「芝居」というとおり、「演じる」ものです。ですから、紙芝居を上演するときに使う枠は、ただの箱ではなく、「舞台」といいます。
舞台の扉は、劇場でいえば緞帳のような役割を持ちます。閉じた扉が徐々に開くとき、
見る側の気持ちは、いよいよ「観客」になっていきます。
扉のない舞台を使う場合は、扉のかわりとして、幕紙(表紙の前面に置く、紙芝居とは別の1枚)を用意するとよいでしょう。
舞台には、空間を仕切ることで絵を際立たせ、観客が集中しやすくなる効果があります。
舞台を使わない、手で持ちながらの上演は、場面の抜き差しがしづらくなりますし、持ち手によって絵が隠れてしまいます。
「ぬく」と「さす」の効果
絵本は、縦書き・横書きにあわせた綴じによって、めくる方向が変わります。
紙芝居は、必ず観客から向かって左側で抜き差しします。
場面は、右から左へ、少しずつぬかれて行きます。
場面をぬき始めてからぬき終わるまで、次の場面が徐々に見えてきます。この数秒は「間」となり、少しずつ見えてくる場面に連動して、観客はおのずと場面に集中し始めます。
そして、ぬかれた場面は、左から右、立ち現れた新しい場面の方向にむかって、さしこまれて(戻って)いきます。さしこみ終わったとき、演者の手は舞台に戻り、観客の集中が完成します。演者は、観客と向き合い、新しい場面の内容を演じます。
この一連の動きが、観客の集中を深め、演者と時間・空間を共有することでコミュニケーションを生みます。
舞台の扱いや抜き差しに慣れるまでは、「さす」ことが難しく、ぬいた場面を手前に置いてしまうことがあるでしょう。けれども、ぬいた画面は単に見えなくなればいいのではありません。左から右へ、画面へ戻るようにさすことによって、集中が生まれるのです。
ぬき方には、サッとぬいたり、途中で止めたり、いろいろな演出があります。
作品にふさわしいぬき方ができれば、言葉とは違った表現で、おはなしを伝えることができるでしょう。
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